第 2 回

ISO 42001の発行の背景

コラムの第2回目では、AIを取り巻く国内外の動向を解説する

2017年
 2017年10月に、進化を続けるAIの国際的な標準化を推進するため、ISO(国際標準化機構)では、情報技術の専門委員会(TC)の配下にAIを専門とする分科委員会(SC)を設置した(ISO/IEC JTC 1/SC 42:Artificial intelligence)。
 なお、ISO/IEC JTC 1とは、ISO(国際標準化機構)とIEC(国際電気標準会議)の第一合同技術委員会( Joint Technical Committee 1) を指し、情報技術( IT)分野の標準化を行うための委員会を指す。

2019年
 2019年5月には、OECD(経済協力開発機構)が、人権と民主主義の価値観を尊重しつつ、信頼できるAIの責任あるスチュワードシップ(受託者責任)を推進することにより、AIのイノベーションと信頼を促進することを目的として、人工知能に関する理事会勧告(AI原則)を採択した。
 なお、この勧告で言及している5つの原則は、以下の通りとなる。


■ 包摂的な成長、持続可能な開発及び幸福
■ 人間中心の価値観及び公平性
■ 透明性及び説明可能性
■ 頑健性、セキュリティ及び安全性
■ アカウンタビリティ


 
2020年
2020年6月には、”人間中心”の考えに基づき、責任あるAIの開発・利用を推進するために設立された国際的な官民連携組織として、AIに関するグローバルパートナーシップ(GPAI)が設立された。
また、8月には、ISO(国際標準化機構)のISO/IEC JTC 1/SC 42:Artificial intelligence(人工知能)によって、AIマネジメントシステムの国際規格であるISO 42001の開発に関するNWIP(新規作業項目提案)の投票が行われ、承認された結果、規格の開発が開始された。


 
2022年 ~ 2023年
 2022年頃から頻繁にAIに関連する問題や課題が話題になった。例えば、代表的なものに、ウクライナ侵攻におけるゼレンスキー大統領の偽演説などのフェイク動画や、ChatGPTなど生成AIが急速に浸透したことにより、生成したコンテンツの著作権などが話題になったことが挙げられる。
 2023年1月には、NIST(米国国立標準技術研究所)により、AIリスクマネジメントフレームワークが発表された。
 また、2023年5月19日から5月21日にかけて広島で、第49回先進国首脳会議(G7広島サミット)が開催されました。その中で、人工知能(AI)を巡るルール形成を協議する国際枠組みの一つである広島AIプロセスに関するG7首脳声明が発表された。
 なお、広島AIプロセス国際行動規範の構成は、以下の通りとなる。


■ 前文 – 行動規範の目的、行動規範の遵守主体、OECDの「AI原則」など既存文書との関係など
■ 第1条 – 開発から上市後の利用段階まで全ライフサイクルをカバーするリスク管理
■ 第2条 – インシデント(問題事象)の分析と改善
■ 第3条 – リスク分析や技術設計などの文書化・公表による透明性の担保
■ 第4条 – 官民連携体制
■ 第5条 – 個人情報保護などデータガバナンス体制
■ 第6条 – サイバーセキュリティ対策
■ 第7条 – AIによる生成コンテンツであるとユーザーや閲覧者が識別できる仕組み(電子透かしなど)
■ 第8条 – リスク軽減の研究と投資
■ 第9条 – 気候変動や保健衛生、教育などグローバル課題を優先したAI開発
■ 第10条 – 国際的な技術規格
■ 第11条 – AI学習データの著作権法や個人情報保護法の遵守など
 
2023年12月には、ISO(国際標準化機構)のISO/IEC JTC 1/SC 42:Artificial intelligence(人工知能)によってISO 42001:2023が発行された。


 
2024年 ~ 2025年
 2024年2月には国内で、安全、安心で信頼できるAIの実現に向けて、AIの安全性に関する評価手法や基準の検討・推進を行うための機関としてAIセーフティ・インスティテュート(AISI)が設立された。
 また、2024年4月には、総務省及び経済産業省によって、今まで発行してきたAI関連のガイドライン(「AI開発ガイドライン(平成29年、総務省)」、「AI利活用ガイドライン(令和元年、総務省)」、「AI原則実践のためのガバナンスガイドラインVer1.1(令和4年、経済産業省)」)を統合し、AI事業者ガイドライン(第1.0版)が公表された。なお、ガイドラインの構成は以下の通りとなる。
■ 第1部 AIとは
■ 第2部 AIにより目指すべき社会及び各主体が取り組む事項
A. 基本理念
B.原則
C. 共通の指針
D. 高度なAIシステムに関係する事業者に共通の指針
E. AIガバナンスの構築
■ 第3部 AI開発者に関する事項
■ 第4部 AI提供者に関する事項
■ 第5部 AI利用者に関する事項


 
2024年5月には、EUでArtificial Intelligence Act(欧州AI法)が成立され、特に医療機器関連の製品を製造している国内メーカーの注目を集めた。
 国内でも、2024年8月には内閣府によるAI制度研究会が開催され、法整備に向けた有識者会議が開始され、2025年5月には、AI新法(人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律)が参議院で可決され、6月4日に公布された。
 また、2025年5月にデジタル庁が「行政の進化と革新のための生成 AI の調達・利活用に係るガイドライン」を公表した。
2025年7月には、ISO(国際標準化機構)のISO/IEC JTC 1/SC 42:Artificial intelligence(人工知能)によってISO 42001の認定基準である、ISO 42006:2025が発行された。それによって、同月、国内の認定機関であるISMS-AC(情報マネジメントシステム認定センター)が、ISO 42001の認定・認証制度を開始した。
 さらに2025年8月に、ISO 42001のJIS版である、JIS Q 42001:2025が発行されたことにより、ISO 42001の認証取得が加速することが予想される。


 
次回のコラムでは、 “AIマネジメントシステムの国際規格 ISO 42001”を解説する。